公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
Print ISSN : 2186-5868
研究ノート
地方分権時代の自治体職員意識――モチベーションの規定要因に関する実証分析――
善教 将大城戸 英樹
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2012 年 12 巻 p. 141-154

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抄録

本稿の目的は,自治体職員の職務に対するモチベーションの規定要因を実証的に明らかにすることである。近年,自治体職員のモチベーションをいかに高めるかが,多くの自治体における課題として掲げられている。しかしその一方で,モチベーションの規定要因を実証的に明らかにする研究はそれほど多くない。さらに,既存のモチベーションの規定要因に関する研究の多くは,性別や職階級といったミクロレベルの要因に着目しており,自治体を取り巻く社会経済環境や制度といったマクロレベルの要因がモチベーションに与える影響の考察を欠いている。本稿では,筆者らが中心となって実施した自治体職員を対象とする意識調査を用いたマルチレベル分析より,職務に対するモチベーションの規定要因を,特にマクロレベルの要因の影響に着目しつつ実証的に分析する。分析の結果明らかとなったのは次の3点である。第1に,職務に対するモチベーションおよびその規定要因の効果には,個人の差には還元できない自治体ごとの体系的な差が存在する。第2に,マクロなレベルの要因は,自治体ごとのモチベーションの差を説明する。第3に,モチベーションを規定する要因の効果についても,マクロレベルの要因がその多寡を左右する。以上の知見は,これまでほとんど検討されてこなかったマクロレベルの要因の重要性を示すものである。

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© 2012 日本公共政策学会
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