公共政策研究
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Print ISSN : 2186-5868
特集 公共政策と価値・規範
多元的政策分析の実践――新医師臨床研修制度を例に――
小松崎 俊作
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2013 年 13 巻 p. 46-64

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抄録

2004年4月から実施された新医師臨床研修制度は,地方や特定診療科における医師不足を引き起こしたといった批判がなされる一方,政策目標そのものについては擁護する見解も見られ,有効な改善策は見いだされていない。本研究では,より「適切な」政策をデザインするための情報を提供することを目指して,Frank Fischerによる多元的政策分析枠組みを用いて同制度の政策分析を行った。その結果,コンテクストレベルにおいては,目標達成度,医師としての専門性・自立性といった観点から肯定的評価が支配的であることが明らかとなったが,社会全体レベルにおいては,新制度(特にマッチングシステム)の導入が引き金となって,医局による医師の引き上げが意図せず発生し,医師偏在(不足)という問題につながったことがわかった。こうした分析に加えて,政治哲学・公共哲学や各国医療制度に関する文献調査,専門家・有識者らへのインタビュー調査を通じて,平等-自由の軸と医師の私的性格-公的性格の軸という2つの価値軸からなる価値平面を作成した。この価値平面は,複雑な問題・解決策について議論・検討するための概念装置としての役割を果たすものである。最後に,この価値平面を用いて,新医師臨床研修制度ならびに医師偏在を巡る問題に対して,より「よい」解決策をデザインする方向性を検討した。

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© 2013 日本公共政策学会
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