公共政策研究
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研究ノート
都市属性から見た政令指定都市の中核性に関する研究―後発型政令指定都市を中心として―
爲我井 慎之介
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2015 年 15 巻 p. 116-130

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抄録

2000年以降,我が国大都市制度の骨格は,自治体の大規模化と事務権限の移譲を一括りにする「概括的な政策」へと転換した。そこで本稿では,制度下にある政令指定都市(政令市)の規模や中核性を数値化し,それらの関連性から,制度の直面する課題を明らかにする。

はじめに,予備作業として戦後日本の大都市制度(特別市及び政令市制度)の成立過程で生じた対立構造を整理し,政令市の設計概念を把握した。次に,全国に20ある政令市を対象に,人ロ・面積などの都市規模とその中核性を示す変数を投入して主成分分析を行い,それらの4つの特性に合成した。さらに,主成分得点を求め,政令市を複数のクラスターとして類型化した。

先行研究の知見が示すように,自治体の区画と背景にある社会的実態のかい離は,大都市問題の本質である。分析結果は,制度の単一性にも関わらず,政令市相互の関係性が極めてかい離している状況を示した。また,後発型政令市とは,外形的には地域の大規模な中核都市だが,周辺地域を圧倒するほどの都市の中核性や一体性を欠いていることを明らかにした。

本来,大都市制度の適用範囲は,背景にある大都市社会を無視しては論じえないものである。新たな大都市の枠組みの構築にあたっては,より大都市の都市属性を踏まえた制度化が不可欠であろう。

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© 2015 日本公共政策学会
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