公共政策研究
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知事の選挙前連合,非難の政治,有権者へのアピール
竹中 勇貴
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2023 年 23 巻 p. 156-167

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抄録

本論文は,都道府県議会における知事の議案の可決や修正・否決をよりよく説明するために,知事と有権者の政治的なコミュニケーションに注目する。1990年代以降政治のメディア化をはじめとする変化もあり,メディアを通して自らの議案について有権者へのアピール(「going public」と呼ばれる)をする知事が多く見られるようになった。本論文は,有権者へのアピールが知事の議案の成立につながる条件は限られており,全体的には知事と議会の対立を深めると論じる。よって,政治のメディア化が指摘される時代にありながら,知事は選挙前連合が大きいほど,議会との関係を協調的にするためにむしろ意図的に沈黙を選択するようになる。

知事が自らの議案を修正・否決されやすくなるにもかかわらず有権者にアピールするという行動は,「非難の政治」の理論によって説明できる。すなわち,知事が有権者にアピールするほど知事の議案の修正・否決によって議会側の支持が大きく低下し,相対的に知事に有利な状況となる。具体的には,選挙前連合に自民党が含まれない知事については,有権者に積極的にアピールするほど知事の議案の修正・否決によって次回選挙で自民党の議席率が大きく低下する。しかし,選挙前連合に自民党が含まれる知事についてはそのような効果が見られない。

本論文は,有権者へのアピールの指標として知事の記者会見の数に注目し,都道府県の公式ウェブサイトやそのアーカイブにおける記者会見録からデータを収集し,上のことを定量的に明らかにする。

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© 2023 日本公共政策学会
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