公共政策研究
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経済社会の変動と日本の雇用保険二事業―雇用調整助成金の財政運営と政策効果について―
高橋 勇介
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2023 年 23 巻 p. 168-178

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抄録

コロナウイルス流行の中,雇用調整助成金が,雇用維持に対する政策の一環として着目されるようになった。雇用調整助成金をめぐっては,失業を未然に防いでいるという主張がなされる一方で,正規雇用の雇用保護を助長し,産業構造の転換を遅らせるという批判がなされてきたことも事実である。一方で,多くの先行研究が,雇用調整助成金の雇用維持効果を認めている。ただし,リーマン・ショックを契機とした,雇用調整助成金の支出拡大と財政運営については,課題も残された。

本稿では,雇用調整助成金の財政運営の変遷と政策効果に対する議論を整理し,制度の課題について検証する。特に,コロナウイルス流行による経済変動のもとでは,2020年の雇用保険臨時特例法制定や「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」の新設が実施され,一般会計からの繰り入れも行われたが,厳しい状況に追い込まれたすべての企業が必ずしも受給を求めるわけではなく,雇用調整助成金には失業回避効果があるものの,社会的損失も発生する可能性があるなど,課題も多い。一方で,雇用保険の受給期間が短く,非正規雇用に対する雇用保護が弱い日本においては不況時における雇用維持政策として,一定の政策的意義があると考えられる。

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© 2023 日本公共政策学会
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