公共政策研究
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国会議員の政治資金―2017-18年政治資金収支報告の分析―
出口 航
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2023 年 23 巻 p. 98-112

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抄録

国会議員はどれほど政治資金を調達し,それは制度・競争環境・政党・個人属性といった要因とどのような関係にあるのか。1990年代の政治改革では,小選挙区比例代表並立制の導入によって政治資金の必要性が低下すると予測された。2000年代以降は議員レベルの収入実態が把握されていない。また,参議院議員も検討されていないため,異なる制度や競争環境と政治資金の関係は明らかになっていない。

本稿は,政治資金収支報告書から2017・2018年の衆参議員データを構築し,議員の政治資金収入を検討する。制度,政党個人属性と収入の関係を,並立制導入直後の二次データ(1996年)との比較から検討した。明らかになった点は次の通りである。

第一に,政治改革で目指したように議員の収入額は減少しつつあるが,議員間で収入額に差がある。第二に,参院議員よりも衆院議員の方が,比例単独選出より小選挙区選出議員の方が収入額は大きい。第三に,政治改革直後と比べてどの政党でも収入額が減少しているものの,自民党議員は相対的に大きな収入額を維持している。第四に,個人要因と比べ,選挙制度や所属政党が収入額との関連が強く,比例区選出議員は収入が少ない傾向にある。これらの結果は,政治改革が資金の抑制に一定程度機能したことを示唆している。

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