本稿では,第208回国会(2022年度)の予算審査を分析対象として,議院内閣制・ニ院制という政治制度の違い,とりわけ参議院予算委員会で採用される片道方式が,委員会審査の質疑という議員行動に影響を及ぼしているかを検証した。国会質疑の巧拙が生まれる5つの要因として,参議院の監視機能,議員の専門性,選挙制度の違い.イデオロギー.キャリアを取り上げた。参議院予算委員会では,片道方式を採用しており,短い質疑を数多く行うことによって,効率的な審査を行うことが可能であり,監視機能を担う上で有用となっていると考えられる。
分析の結果参議院予算委員会で採用されている片道方式に起因して,衆議院議員の方が政治レトリックを多用していることが明らかになった。参議院予算委員会で採用されている片道方式は限られた質疑時間を最大限活用するため,政治レトリックの使用を減らすことが明らかとなった。権力の融合と分立という観点から考えると,衆参の選挙制度の違い及び審査方式の違いによって,質疑に違いが生じていることが明らかとなった。参議院議員は監視機能を発揮しようとして質疑を行い,衆議院議員は有権者に向けて政治レトリックを使用しているといえる。