2003 年 3 巻 p. 137-147
本の動物愛護管理行政は,2000年の「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正施行により転換期にある。動物愛護推進員制度が市民参加の制度として初めて法律で定められたが,動物愛護の領域で行政と市民のパートナーシップ事例は依然極めて少ない。動物愛護推進員は法に基づき市民が委嘱される準公務員で,立入検査等の権力はなく啓発を目的とする。
今回,兵庫県は日本で初めての動物愛護推進員制度運用のモデル・ケースとなり,筆者は民間の立場から行政と市民の聞に位置する“協働コーディネーター”として本制度運用に深く携わった。筆者は地方自治体と動物愛護推進員の中間で中立的な存在として位置し,地域づくりのプロセス・デザインを図った。
本稿では,この事例の成果と課題を通じて,日本の動物愛護管理行政における市民参加についてまとめる。
成果は,協働企画型の運用が行政・市民双方の意識変容を促したこと,その結果,地域課題の解決への筋道を“シナリオとして協働で作成できたこと協働コーディネーターが重要な機能を果たしたこと,行政の縦割りを克服する生活者視点の成果が認められることである。課題は市民参加の多様なレベルへの対応である。
本稿の結論として,エージェント型の市民参加から協働企画型への移行,協働コーディネーターの活用,動物愛護の倫理的意義再構築の必要性を挙げる。