公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
Print ISSN : 2186-5868
論文
環境自主規制の考察
相良 敬
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2003 年 3 巻 p. 91-105

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抄録

稿の目的は,企業による環境自主規制が,英国のように環境政策の第一の手段として利用することができるのか,又は米国のように,現在世界のほとんどの国で環境政策の第一の手段となっている環境規制を補完するものとして用いられるべきなのかを検証することである。本稿では,まず始めに,環境自主規制が,環境規制よりも望ましいものであるとしみ主張の根拠となっている,①フレキシピリティと効率性が高い,②短期間での実施が可能である,③イノベーションを促進する,という3つの環境自主規制の長所の説明を行う。環境自主規制の長所の説明をした後。本稿は,それら3つの長所は,実際には必ずしも存在しない,またはその長所が実際には短所となってしまっていることを明らかにする。

次に,本稿は,環境政策の手段として望ましいものであるための最も重要な条件である,市民が環境自主規制作成過程において参加できているのか(市民参加),市民は,環境自主規制を信頼しているのか(信頼性)としろ問題についての検証を,英国でのアンケー卜の結果をもとにして行う。そして以上の検証の結果から,環境自主規制jには,主張されているような三つの長所は,必ずしも存在しなかったり,その長所が欠点、となってしまったりしており,さらにその作成過程において市民が参加できておらず,そして市民からの環境自主規制に対する信頼性も極めて低いことが明らかとなる。

したがって,環境自主規制は,現状では,環境政策の第一の手段として用いるには問題が多いので,環境政策の第一の手段としてではなく,環境規制を補完する環境政策の手段として用いられるべきである。また,環境自主規制が環境規制を補完する手段として,効果的,効率的に機能するためには,市民,環境団体,政府が,環境自主規制lの作成,実施においてより積極的に関わらなければならない。最後に,本稿は,環境自主規制が,環境政策の有効な手段として機能する為には,このように環境自主規制における市民,環境団体,政府の役割を変えるだけでなく,企業,政府,そして市民という社会全体が環境保全に対する意識を変え,積極的に環境問題に貢献しようとすることが必要であると結論づける。

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© 2003 日本公共政策学会
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