2008 年 8 巻 p. 112-124
行政評価制度が,日本の地方自治体に導入されてから,10年以上が経過した。しかしながら,いまだにその効果を疑問視する声が高い。また,行政評価制度の活用度・影響度が低下している状況も見受けられる。先行研究では,行政評価制度の課題として,支出カット目的の評価による行きづまり,政策志向ではないこと,リテラシーの不足,などが指摘されてきた。しかしながら,行政評価制度の効果を考察する場合には,地方自治体が最も重視している予算・組織編成ツールとしての機能を分析する必要がある。
今回の分析では,行財政改革下における行政評価制度の予算編成への反映状況について,事例分析を行った。すべてのケースにおいて,厳しい財政状況下での行財政改革が行われていた。このような状況下で,各自治体とも行政評価制度の機能強化の必要性を指摘している。しかしながら,厳しい財政状況下での予算編成に対する有カなツールは行政評価制度ではなく,「ゼロベース」の視点から「全事業」を見直すことが可能である「事業仕分け」制度であることがすべてのケースで確認された。厳しい財政再建計画を前提とした行財政改革への取組みが一刻の猶予もない状況下においては,より即効性の高い成果が求められる。このような状況下では行政評価制度の機能は十分に発揮できず,このことが評価制度の活用度や影響度を低下させている要因となっていることを確認した(1)。