公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
Print ISSN : 2186-5868
特集 環境サステナビリティの実現をめざして
環境被害ストックに対する総合的な公共政策
尾崎 寛直
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2008 年 8 巻 p. 63-73

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抄録

今日,環境政策は,「サステナブルな社会」実現を掲け,領域的・空間的にも,時間軸においてもかつてとは比べものにならない広がりをみせているが,従来日本の環境政策は,産業政策に対して後追い的に,公害・環境問題に対して事後的・対症療法的に対策を行うという制約を受けてきたがゆえに,現在においてもなお深刻な「環境被害ストック」を再生産し続けている。

フローとしての環境汚染はある程疫緩和され,表面的に「公轡は終わった」ように見えても,環境政策が不徹底のままその手を緩めてしまえば,長年蓄積された被害は,環境被害ストックとして解決不能な状態で「放岡」され,被害者・家族や彼らをとりまく社会に絶対的な損失をもたらしうる。それは環境被害を解決するどころか,ますます環境被害ストックを増大させていく政策になりかねない。21世紀のサステナブルな社会づくりのためには,前提として前世紀の環境被害ストックをなくしていくことが不可欠である。そうした環境問題の解決のためには,汚染の除去などフローの対策だけでなく,いまや福祉政策(広い意味で社会保障的な政策)が必要であり,その意味で環境政策と福祉政策の政策統合の視点が必要とされるのである。

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© 2008 日本公共政策学会
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