2010 年 9 巻 p. 93-108
地域福祉計画は総合性,策定段階での住民参加,自治体の裁量の度合いが高いという3つの特徴をもつ計画で,2000年に社会福祉法で規定され,2003年に施行された。本稿では福祉分野の分野別総合計画である地域福祉計画に着目し,白治体ごとにどのようにバリエーションをもつのか,その要因は何かについて,計画論とガバナンス論と組織経済学の調整問題を組み合わせながら分析を行った。その結果,アクターの複数化,アクター間の関係の水平化,というガバナンスの状況での計画について,以下の2点が明らかになった。第1に地域福祉計画は,その総合性のもつ内在的な矛盾から地域福祉計画が求められる機能のうち,優先順位・課題設定型,優先順位・執行管理型,需要の顕在化と整理・課題設定型,需要の顕在化と整理・執行管理型の4つのどれかの機能に特化する。こうした計画の類型は,計画過程における現場レベルでのアクター間の情報交換が十分であるかどうか,情報効率性が高いかどうか,庁内の合意形成の結果システムの脆弱性が高いか低いかに影響をうけるということである。第2に,計画そのものが施策の実行において果たす機能と計画過程は,関連があるのである。これらを神奈川県大和市,横須賀市,藤沢市,海老名市の事例研究により実証した。