抄録
【背景・実践方法】
先天性心疾患があり,手術を行った乳児は摂食機能障害を起こしやすいことが明らかとなっている。その原因として治療や病態により摂食機能を獲得する過程が阻害されていることも大きいと考えられ,手術後早期からの継続的な支援が必要であるが介入方法は確立されていない。
そこで今回,先天性心疾患があり,手術を行った乳児の母親に対し,摂食が制限されている時期から乳児の摂食機能に関するセルフケアを向上させるため3か月の実践を行い,実践の効果を検討した。実践はオレムのセルフケア不足看護理論を基盤とし,乳児の摂食機能に関するセルフケア要件を明らかにした上で,乳児の能力だけでは要件を満たすことができない部分を乳児に代わり,依存的ケア・エージェントである母親が児の能力を引き出すことができるよう看護介入内容を決定し,実践を行った。
【結果・考察】
母親は実践前,《児の病気に関する必要な情報を選択することができない》ことや《児の発達に必要な情報がわからない》状況であった。また,《児の成長を捉えることは難しい》と感じている母親もいた。研究者は母親と一緒に乳児の能力を査定することで治療や病態により制限を受けながらも維持・獲得してきた能力に目を向け,その能力を生かして,乳児の能力が向上していくよう,実践内容の意味を明確にしながら意図的に介入を行った。
その結果,母親は≪児の発達に必要な知識が選択できる≫ようになり,≪児が摂食機能を獲得するための機能がわかる≫ことや≪自分の実践に根拠をもつ≫ことで≪最終達成目標に向けて今何をするべきかがわかる≫ようになり,主体的に実践を行うことができるようになった。母親を手術後早期から依存的ケア・エージェントと位置づけ乳児への実践を共に行っていたこと,実践を研究者とともに乳児の発達を見守りながら変化を見逃さず母親にフィードバックし続けたことが効果につながったと考える。