抄録
品質(TQM)の発展段階は,休暇から覚醒,模索から成熟へと向かう4つ段階に区分できる.休暇段階では企業には市場は目に入らず,スウェーデンおよび西欧の企業は70年代後半までこの段階にいた.日本企業との品質の格差に気がついた80年に覚醒段階が始まった.そして,今模索段階で試行錯誤が繰り返されている.スウェーデンにおける品質向上への取り組みは,10年前品質サークル(QCサークル)の流行からはじまった.コンサルタントやいわゆる品質専門家に扇動された多くの経営者は,QCサークルさえやれば品質問題はすべて解決できると信じ込んだ.その結果,数年の真の品質改善への取り組みが遅れた.そして,QCサークルは去ったが,今度はいわゆる多くのトレンディ・メソッドが押し寄せた.SPC, QFD, QC七つ道具,"TQM",ベンチマーキング,リエンジニアリング等々である.当然のことながら,これらの方法自体が悪い訳では無論ない.問題はどのようにそれが実行されるかにある.ただ日本で使われているというだけで導入してもうまくいくはずがない.目標もなしに手段だけ用いているようなものである.それでは,どのように成熟段階に到達するか,他の西欧諸国と同様にスウェーデンには,ある種の効率的戦略をもつことが必要と思われる.その4つの戦略とは,信頼関係をベースとしたリーダーシップの育成,階層・職能を問わない強力な教育訓練の実施,顧客の要求を把握し競争相手の動きを注視するマーケット指向の強化,そして,顧客満足とプロセスの改善を目的とした品質改善プログラムの駆動させることである.このような戦略のもとで2000年までには,スウェーデン企業が成熟段階に達していることを望みたい.