抄録
近年は品質保証のしくみすなわち品質システムを確立するためにISO9000シリーズを活用する企業が増えているが, 反面, 標準の改訂が少なくなるなど組織としての活性度を低下させている企業も見られる.この問題の対策として着目されているのが, TQMなど, よりダイナミックな組織変革を生むための方法論との併用である.本論文では, ISO9000シリーズの審査登録を受けた企業およびデミング賞を受賞した企業に対して, 各々の活動の進め方による標準の改訂率, 部課長およびスタッフによる課題解決件数, QCサークルによるテーマ解析件数, 標準の遵守率, 日常業務における異常の発生件数の違いを調査し, ISO9000シリーズに基づく品質システムの構築・運用とTQMによる改善・改革を同時に進める場合の注意点を明らかにすることを試みた.結果として, 適切さに重点を置いた内部品質監査や日常管理, 方針の展開・進捗管理, QC教育を充実・徹底させること, 標準体系を単純なものに保つことは組織の活性度(標準改訂率, 課題解決件数)を向上させること, 全社的な標準の体系化, 標準の改訂権限の下位への委譲など標準の内容・しくみや標準化教育を充実させることは組織の安定度(標準の遵守率)を高めるのに有効であることなどが分かった.