抄録
現在, 設計不備による不具合が跡を絶たない.不具合の特徴として原理的には既知で部品やユニットに対して横断的に再発していることがあげられる.すなわち, 不具合の多くは技術的な知識水準が低いために発生しているのではない.設計案の妥当性の検討, 評価において個人や組織が保有する不具合に関する知識を十分に運用できておらず, 設計案が実現可能な成熟度まで達成していないために発生している.本論文では, 不具合に関する知識の獲得の仕方に焦点を当てる.設計案に潜む不備の顕在化に再利用可能な不具合に関する一般的知識がもつべき知識の形態の具体化を試みた.まず, 不具合に関する知識の運用過程をモデル化し, 知識獲得過程における現状の問題点を明確にした.そして製品設計の不具合事例を解析し, 知識獲得のために必要な基本概念として, 属性集合, ストレングス, ストレス, 不具合モードを抽出し, ストレス-ストレングスモデルによる知識構造を構築した.また, 概念獲得を支援する観点を抽出し, 因果の連鎖を表現するための知識表現形式を用意した.さらに, 実際の機械組立製品を対象に設計に再利用可能な知識べースを構築し, 提案内容の有効性を検証した.