2009 年 39 巻 4 号 p. 504-514
近年,社会的に問題となるトラブル・事故を起こす組織が後を絶たない.これらのトラブル・事故は,技術的に既知で,作業者がどのような行動をとるべきか明確であったにもかかわらず,意図しないエラーや意図的な不遵守などにより適切な行動が取られなかったことが原因となったものが少なくない.その背後には経営トップの関心の薄さや現場でのエラープルーフ化活動の欠如などの組織要因に原因があると考えられる.組織要因を明らかにする方法として根本原因分析(RCA)が注目されているが,必ずしも適切には行われていない.本研究では,人の不適切な行動を防止するために組織が行うべき管理活動をモデル化した上で,このモデルに基づいて,経験があまりない人が行っても,対策を取るべき根本原因を的確に特定できるRCAの具体的な手順を提案した.また,これを公表されている事故事例に適用し,その有効性を検証した.結果として,組織要因を明らかにする上の困難さを緩和することができることがわかった.