抄録
近年,発生しているトラブル・事故を調べると,人の不適切な行動によって起こっているものが多い.人の不適切な行動に起因するトラブル・事故を防ぐ上では,未然防止活動が重要である.未然防止活動については既に多くのモデルが提案されているが,代表的な分野における未然防止活動の現状と課題については必ずしも明らかにされていない.本論文では,製造,医療,運輸の3分野に焦点を絞り,それぞれの分野における未然防止活動の現状を調査・比較し,未然防止活動をさらに進めるために今後取り組むべき課題を明らかにすることを試みた.結果として,未然防止活動の要素の実施レベル,トラブル・事故の少なさに影響する要素,要素の実施レベルを向上させる上での困難さとその克服策は分野ごとに異なっており,未然防止活動をさらに発展させるには,それぞれの分野の状況に応じた取り組みが求められることがわかった.