抄録
初期の実験においては,実験の場の誤差がどれくらいか,要因効果のある因子はどれくらいあるのか,要因効果の大きさはどの程度か等についての事前情報は少ない.このようなとき,実験者は,直交表を用いた実験をおこなう.誤差の自由度を5~6 程度以上にできればよいが,実験数を極小化するため,割り付け時点では,誤差の自由度はこれより少ないことが多い.また,プーリングの基準も明確ではない.
本研究では,3 水準系直交表による実験結果を解析できる自由度2 のx2 プロットと呼ぶ図的分散分析の改良法を提案する.シミュレーションにより検出力を検討し,実務的に大きな問題のないことも確認し,もって,3 水準系直交表の実務への適用を促進,支援する.一般の分散分析法に対する利点は以下の通りである.
①図的方法なので,数理統計学や実験計画法の深い理解がなくても利用でき,簡便である.
②プーリングを必要としないので,プーリングの基準に悩まされることもない.
③誤差列の中に考慮していない有意な潜在要因を発見できる可能性がある.
④誤差分散の推定値がない場合にも適用でき,誤差分散の推定も可能となる.
⑤検出力は,F 検定による分散分析と同等である.