2009 年 58 巻 5 号 p. 153-160
日本原子力研究開発機構の研究施設から発生する放射性廃棄物を対象としたルーチン分析法の一つとして,59Ni及び63Niの分析法について検討を行った。分析試料の核種組成や化学成分を考慮して,分離条件の最適化を図った結果,金属廃棄物試料及び濃縮廃液試料に含まれる59Ni及び63Niの放射能濃度を効率よく定量することができた。本検討で作成した分析フローを用いれば,溶液化した試料を5~7日間で10試料程度処理することが可能であり,今後,原子力機構で進める予定の廃棄物試料に対するルーチン分析に十分対応可能である。本検討に用いた金属廃棄物試料は研究用原子炉から発生したものであり,原子炉の運転履歴等から計算コードにより放射化量を求め,63Niと59Niの放射能比を指標として分析値との比較を行った。計算により求めた63Ni/59Ni放射能比は,98~109の範囲であり,分析値における63Ni/59Ni放射能比118±6と比較的よく一致した。