RADIOISOTOPES
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中性子回折の基礎と応用
(基礎3)中性子回折による粉末結晶構造解析の実際ー水素化合物Li2NHを例としてー
大山 研司
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2010 年 59 巻 3 号 p. 179-189

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抄録

中性子粉末回折は,X線回折とならび,現在の物質科学,材料科学になくてはならない実験技法であり,特に現在の環境材料で主役となる水素,酸素,リチウムなどの軽元素の構造物性理解において決定的な役割をはたしている。本稿では,中性子粉末回折実験から結晶構造決定にいたるプロセスを,未経験の方を想定して具体例により説明する。特に,解析に必ず必要となる解析ソフトの情報にも重点をおいた。実例として,水素貯蔵物質の候補として注目されている水素化合物Li2NHでの水素構造を解明した例をあげた。中性子回折により,X線で決定されていた構造があやまりであることを示し,その構造解析により,水素と窒素が共有結合をしていること,しかし結晶学的なサイトのごく一部しか埋まっていない奇妙ともいえる構造をとっていることを示した。

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