RADIOISOTOPES
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59 巻 , 3 号
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原著
  • 伊藤 小百合, 鈴井 伸郎, 河地 有木, 石井 里美, 石岡 典子, 藤巻 秀
    2010 年 59 巻 3 号 p. 145-154
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    ダイズ植物の根粒に対する光合成産物移行について,ポジトロンイメージング装置とポジトロン放出核種11Cで標識した二酸化炭素トレーサを用いて解析した。特に,多数の小さな根粒を着生するものの生長が劣ることが知られている根粒超着生変異系統NOD1-3を用い,その地下部における光合成産物の動態について親系統との比較を行った。
    変異系統,親系統いずれも,11C-光合成産物は20分以内に根の基部に到達し,1時間以内には根の先端に到達した。地下部へ移行した11C-光合成産物のほとんどは,根の基部に密集する根粒に蓄積しており,基部の根粒には遠位の根粒と比較して,根粒1個あたりでも根粒体積あたりでも光合成産物の移行量が大きいことが示された。このことは,変異系統,親系統いずれの場合も基部の根粒は窒素固定活性が高いことを示唆するもので,根粒が根のどの部位に着生するかということが,窒素固定活性に対して重要であると考えられた。また,基部と遠位,それぞれの部位において,根粒体積あたりの光合成産物の移行量について変異系統と親系統を比較すると,両者に違いがないことが明らかになった。一般的に変異系統では親系統よりも一個体あたりの窒素固定能が劣るが,これは従来考えられてきたように単に根粒数の増加により根粒全体の光合成産物の消費量が増加するためというより,光合成産物の分配の乏しい遠位への着生割合が増加することが原因であることが示唆された。本研究では,ダイズを用いた個々の根粒への光合成産物の移行について,非侵襲的放射線イメージング技術により解析することに初めて成功した。
  • 山脇 正人, 廣瀬 農, 菅野 里美, 石橋 弘規, 野田 章彦, 田野井 慶太朗, 中西 友子
    2010 年 59 巻 3 号 p. 155-162
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    今回,109Cdγ線放出核種のイメージングを検討し,感度・解像度の評価を行った。109Cdは88keVのγ線を放出すると同時に22keVのX線なども放出するため,109Cdの放射線計測における観測系設計の効率的な条件を検討する必要がある。そこで,本システムにおいて主にどの放射線を検出しているかの分析を行い,最適なシンチレータ厚の検討を行った。その結果,本システムにおいては22keVのX線が効率的に検出されることが確認され,109Cdの良好なイメージングのための知見が得られた。
  • 静間 清, 高取 宏至, 竹中 光大, 村高 礼典, 小島 康明, 遠藤 暁
    2010 年 59 巻 3 号 p. 163-171
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    地下水に含まれるウラン及びラジウム濃度をγ線スペクトロメトリにより定量測定する方法を開発した。この方法では,地下水1Lをテフロンシート上で蒸発乾固し,残渣をシートにくるんで低バックグラウンドGe検出器でγ線計測を行う。238Uの崩壊により生成される234Thは約150日で放射平衡に達するので,234Thの測定により親核種である238Uの定量を行うことができる。ウランの測定結果をICP-MS法と比較して,概ねよい一致が得られた。地下水に溶出している226Raについても同時に定量が可能である。この方法を用いて広島県内58か所から採取された地下水について,ウラン濃度及びラジウム濃度を測定した。ラドン濃度については別に原水250mLを採取し,γ線計測により決定した。広島県内のウラン,ラジウム,ラドン濃度の分布と地質の関係を示すとともに,ウラン濃度とラジウム濃度には明らかな相関が見られ,ウラン濃度とラドン濃度の間には相関が見られないことを明らかにした。
ノート
連載講座
中性子回折の基礎と応用
  • 大山 研司
    2010 年 59 巻 3 号 p. 179-189
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    中性子粉末回折は,X線回折とならび,現在の物質科学,材料科学になくてはならない実験技法であり,特に現在の環境材料で主役となる水素,酸素,リチウムなどの軽元素の構造物性理解において決定的な役割をはたしている。本稿では,中性子粉末回折実験から結晶構造決定にいたるプロセスを,未経験の方を想定して具体例により説明する。特に,解析に必ず必要となる解析ソフトの情報にも重点をおいた。実例として,水素貯蔵物質の候補として注目されている水素化合物Li2NHでの水素構造を解明した例をあげた。中性子回折により,X線で決定されていた構造があやまりであることを示し,その構造解析により,水素と窒素が共有結合をしていること,しかし結晶学的なサイトのごく一部しか埋まっていない奇妙ともいえる構造をとっていることを示した。
  • 泉 富士夫
    2010 年 59 巻 3 号 p. 191-200
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    粉末中性子回折データから結晶構造を精密化する二つの解析法について述べる。リートベルト法では,格子・構造・プロファイルパラメータなどを非線形最小二乗法で精密化する。一方,最大エントロピー法(MEM)に基づくパターンフィッティング,すなわちMPF法では,MEM解析と全回折パターンフィッティングの繰り返しにより単位胞内の干渉性散乱長密度で実質的に結晶構造を表現する。そのため,MPF法は非常に乱れた配置を取る化学種の空間分布や非調和熱振動の研究に非常に役立つ。
  • 八島 正知
    2010 年 59 巻 3 号 p. 201-210
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    燃料電池,ガスセンサー,触媒,電池など様々な応用において重要であるイオン伝導体及びイオンー電子混合伝導体の結晶構造とイオンの拡散経路について解説する。α-AgIは可動Agイオンの多くの占有位置を有する。βアルミナはNaイオンの二次元拡散を示す。セリア固溶体Ce0.93Y0.07O1.96,酸化ビスマス固溶体δ-Bi1.4Yb0.6O3,ヨウ化銅CuIのような蛍石型超イオン伝導体では〈100〉方向に沿った類似の曲線的な拡散経路が観察される。ガリウム酸ランタン固溶体やコバルト酸ランタン固溶体のような立方ABO3ペロブスカイト型構造を有するイオン伝導体では,B陽イオンとO2-陰イオン間の距離をある程度保ちながら曲がった線に沿って可動イオンが拡散する。二重ペロブスカイト型La0.64Ti0.92Nb0.08O2.99,K2NiF4型(Pr0.9La0.1)2(Ni0.74Cu0.21Ga0.05)O4+δ及びアパタイト型La9.69(Si5.70Mg0.30)O26.24の構造と拡散経路を記述する。リチウムイオン伝導体La0.62Li0.16TiO3とLi0.6FePO4の構造と拡散経路についても考察する。La0.62Li0.16TiO3とLi0.6FePO4の拡散経路はそれぞれ二次及び一次元的である。
  • 茂筑 高士
    2010 年 59 巻 3 号 p. 211-219
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    酸素が重要な役割を果たしている酸化物高温超伝導体の研究において,中性子回折による結晶構造解析は必須である。これまでに発見された多数の酸化物高温超伝導体の結晶構造が中性子回折により明らかにされ,それを基盤にして物質設計の指針が構築され,さらなる物質探索が展開されている。また,中性子回折により明らかにされた結晶学的な情報は,酸化物高温超伝導体の特徴ある物性を解明する研究の基盤となっている。
  • 八島 正知
    2010 年 59 巻 3 号 p. 221-229
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    中性子粉末回折法による,無機触媒の結晶構造と核密度分布の解析,生成相と相転移の研究を概説した。酸窒化物光触媒のN原子席におけるO原子の占有率を精密化することができる。セリアージルコニア排ガス触媒の結晶構造,相転移及び核密度分布が,中性子回折法により調べられた。原子変位パラメーターと核密度分布から,酸素イオンの拡散及び触媒活性を考察することができる。ペロブスカイト型及び関連酸化物の結晶構造と酸素イオンの拡散経路を研究するのに中性子回折法が利用された。
  • 伊藤 孝憲
    2010 年 59 巻 3 号 p. 231-238
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,Aサイトがアルカリ土類金属又は希土類金属,Bサイトが遷移金属であるペロブスカイト酸化物の導電機構に強い関心が集まっている。これらの酸化物は固体酸化物型燃料電池(SOFC)の空気極,酸素ポンプ,酸素センサー,触媒等の様々な電気化学デバイスとして期待されている。しかし,酸素イオンの振舞いと電気化学デバイス性能の関係を議論できるほど,酸素イオンの振舞いに関する情報は十分でない。本研究では,中性子回折を用いてSOFC材料の構造解析を行った。リートベルト解析によって,SOFC空気極材料であるペロブスカイト酸化物のO1(4c),O2(8d)サイトの酸素サイト占有率の違いを示した。更に,酸素拡散挙動と酸素異方性原子変位パラメータ温度依存性を関連付けた。中性子回折を用いたMaximum Entropy Method(MEM)解析によって,高温における核散乱長密度分布の詳細を示し,SOFC材料内の酸素拡散経路や新しいプロトンサイトを見つけた。これらの結果から燃料電池材料内の軽元素の振舞いを研究するには中性子回折はとても有用であることを確認した。
  • 深澤 裕
    2010 年 59 巻 3 号 p. 239-247
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    氷はありふれていながらも興味深い性質を持つ物質である。氷の水素の配置が秩序化すれば,普通の氷と異なり,電荷に偏りを持つ強誘電体になる。強誘電体の氷は,万有引力よりはるかに強い電気的な力があり,宇宙での物質進化や惑星形成を促進すると考えられる。最近,粉末中性子回折の実験から,強誘電体の氷が発生する温度と圧力,成長に要する時間等を明らかにした。その結果に基づいて,冥王星などの天体に,表面から内部にかけて強誘電体の氷が大量に存在するとの仮説を提案した。更に,この仮説の実証に必要な観測方法を考案した。
  • 金子 耕士
    2010 年 59 巻 3 号 p. 249-256
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    単結晶を用いた,立方晶スクッテルダイト化合物PrOs4Sb12の低温及び室温における構造解析の結果を報告する。重い電子系超伝導体であるPrOs4Sb12では,大きめのSbケージに内包されたPrイオンが示す巨大振幅の熱振動“ラットリング”の重要性が示唆され,物性との関係に興味が持たれている。単結晶中性子回折と最大エントロピー法を用いた解析により,従来困難であった希土類イオンの安定位置の詳細や熱振動の非調和性に関して,モデルを用いることなく,実空間での描像を得ることが可能となる。本稿では,ラットリングの可視化に成功したことを示す。
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