2010 年 59 巻 6 号 p. 395-403
中性子小角散乱(SANS)が構造解析などに使われるようになってから既に30余年経過した。今では,構造解析の汎用ツールの一つになっており,世界中の主な中性子散乱研究施設で必須の測定装置になっている。とくに,高分子,ミセル,ゲルなどのソフトマターと呼ばれる物質や生物学,金属学の分野における構造解析において中性子小角散乱の役割は大きい。ここでは,なぜ中性子散乱がこうした物質の構造解析に有効であり,どのようなところで実験ができ,その結果,どのような成果が出てきているのか,また出しうるのかについて解説する。