2013 年 62 巻 11 号 p. 857-875
新しいスピントロニクス材料開発のために,希薄磁性半導体あるいは絶縁体(DMS又はDMI)の基礎研究が推進されている。酸化物中にドープした磁性イオンがどんな状態で存在するか,たとえばクラスターあるいは分散したイオンとして存在するか,明確にすることは不可欠である。一方,転換電子メスバウアースペクトロメトリー(CEMS)及びシンクロトロン放射光を使用する核共鳴非弾性散乱(NIS)法は,透過法と同様に,磁性57Feイオンをプローブとして使用し,DMSとDMIの不純物の原子価状態,磁気構造及び局所の振動状態密度(VDOS)分布に関する情報を与える。1%程度の57Fe原子を,TiO2,SnO2,ITO,IZO,SiO2及びAl2O3のような透明な酸化物半導体及び絶縁体にドープして得られるメスバウアースペクトルの超微細構造と希薄磁性酸化物の室温強磁性との関係について述べる。