2013 年 62 巻 3 号 p. 167-174
メスバウアー効果の元素選択性を生かした核共鳴散乱を利用し,カゴ状物質のゲスト原子の振動状態について調べた最近の研究成果を紹介する。一般に単位胞あたりの原子数が多いカゴ状物質において,核共鳴非弾性散乱はゲスト原子の振動状態を議論するのに非常に有効である。カゴ状物質のゲスト原子の振動状態にはゲスト原子の可動長が重要な要素であるが,従来ゲスト原子として取り扱われている全ての原子が音響フォノン対してその寄与が小さくないことが一連の物質の研究から明らかとなった。