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種子処理による農作物の放射線障害に対する化学薬品の保護効果
ビスワス S山元 皓二佐藤 昌良鵜飼 保雄小野沢 芳郎松尾 孝嶺
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1965 年 14 巻 5 号 p. 411-421

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抄録

数種類の作物種子を用いて, X線またはγ線の照射直前または直後における化学薬品処理による放射線障害に対する保護効果をみた。化学薬品は有機, 無機の還元剤, SH-化合物, アミソ, ビタミソ, キレート剤, 代謝促進剤などの中から各種のものが選ばれた。発芽率, 生存歩合, 草丈などの生理的障害に対しては還元剤のvitamin CまたはNa-ascorbate, FeSO4, キレート剤のEDTA-2Na, およびK-化合物による前処理が顕著な保護効果を示した。SH-化合物のcysteineもある程度の効果を示した。ATPは処理前にあらかじめ種子を水に浸して活性状態にしたときにのみある程度の保護効果を示した。
染色体異常に対しては後処理でも保護効果を示すものがあった。
しかしX1に現われる稔性ならびにX1またはX2に出現する突然変異に対しては1~2の例外を除いて効果が認められなかった。
これらの結果から, 放射線によって誘発される生理障害, 染色体異常ならびに稔性低下と突然変異とは, それぞれ異なる過程によって生じるものであり, 化学的保護剤を使用することによってX1の生存率を高め, 突然変異率を向上せしめるものと考えた。

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