1969 年 18 巻 10 号 p. 423-426
HgI2・2HgS (黄色) を日光に照射するとただちに黒色に変色し, 暗所におくか, 熱するとまたもとの黄色に戻る現象の機構については, 竹井により報告されている。黒化したものが黄色に戻る機構として, 焼出されたHgの熱による蒸発, および焼出されたHgがI, Sと反応してHgI2, HgSをつくるためとしていた。しかし, Hgの蒸発については確認していなかった。そこで, 203Hg, 131Iで標識した, Hg*I2・2Hg*S, HgI*2・2HgSをつくり, 変色時のHg, I原子の挙動をしらべた。その結果, 黒化するとHgが焼出され, IはI2ガスとなって結晶外へ逃げるが, 黒化したものを熱すると, 焼出しHgはただちに蒸発して, 結晶はただちに黄色に戻ることがわかった。室温, 暗所でゆっくり黒色のものを黄色に戻すときは, Hgは結晶表面に残るものと考えられる。