抄録
ベンゼン, エタンおよびメタンのハロゲン置換体をクエンチャーとして, トルエン―PPO二成分系シンチレーター溶液のハロゲン・クエンチングを調べた。励起源として113Sn-113mInから放出される内部転換電子を用い, クエンチングを正確に測定した。
種々のハロゲン・クエンチャーのStern-Volmerプロットからクエンチング定数を求め, つぎの知見を得た。 (1) ハロゲン置換基数の増加により, ベンゼンのハロン置換体では直線的に, またエタンおよびメタンのハロゲン置換体では指数関数的にクエンチング定数が大きくなる。また, 異性体間においても異なるクエンチング定数をもつ。 (2) 還元半波電位とクエンチング定数の関係は指数関数的である。 (3) メタンのハロゲン置換体について, 電子励起ではUV励起に比較して大きいクエンチング定数が得られる。
これらの結果をもとに, 液体シンチレーションのクエンチング過程の中間体として注目されているエクサイプレックスの形成反応についても考察した。