抄録
D-ロイシンのexchange diffusion (交換拡散) についてエールリッヒ腹水がん細胞を用いて検討した。37℃におけるD-ロイシンのhomoexchange diffusionはL型のそれとほぼ同程度であった。またD型とL型の間におけるheteroexchange diffusionも同様におこることから, D-ロイシンの膜透過はL型と同じ機構を介して行われるとされている説と矛盾しなかった。他方0℃においてはD-ロイシンのexchange diffusionはほとんどみられないのに反して, L型のそれはまだかなり顕著であった。この温度効果による差異は両異性体のアルキル側鎖がキャリア上の異なった位置に結合して膜透過するという前報の仮説を反映していると考えられる。