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あらかじめ重水を吸収させたイネ幼植物のカリウムイオンの吸収
柴部 禎巳葉田 可林
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1984 年 33 巻 10 号 p. 675-679

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抄録

イネ幼植物の根の含有水のD2O濃度は, 30分以内に吸収液のそれと平衡した。しかし, 茎葉部のD2O濃度は5-6時間経過後平衡に達し, 24時間後もほとんど変わらなかった。吸収液のD2O濃度が94.2%のとき根の水の平衡値は73%, 茎葉部のそれは43-47%である。K+を除外した一定濃度のD2O吸収液で前処理, 平衡させたイネのK+吸収は, 吸収液のD2O濃度の増加に対応してよりつよく抑制された。イネのK+吸収速度はD2O濃度の対数に対して直線的に減少し, D2Oの抑制作用にしきい値はみられない。根から茎葉へのK+の移行は, 40%D2O以上で著しく抑制された。前処理なしのイネでは, 根のK+吸収は0-60%D2Oでは変わらなかったが, 80%以上で抑制作用がみられた。イネのイオン吸収に対するD2Oの抑制作用は, 植物体内水のD2O濃度と密接に関係し, とくに茎葉水のD/H比がイオン吸収を支配していることが明らかになった。

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