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大東諸島の自然放射線レベルとその地質学的解釈
古川 雅英赤田 尚史床次 眞司
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2005 年 54 巻 7 号 p. 213-224

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抄録

沖縄県大東諸島の北大東島と南大東島において, 空間γ線線量率の測定を行うとともに, 土壌試料の分析を行った。北大東島と南大東島における線量率の平均値 (範囲) は, それぞれ106nGy/h (10~140nGy/h) と104nGy/h (10~150nGy/h) であり, 日本国内では比較的高い線量率を呈する地域であることが明らかになった。両島における地質と線量率分布を比較した結果, 90nGy/h以上の地域は赤土 (島尻マージ) の分布域と, 30nGy/h以下の低い線量率分布はサンゴ礁起源の石灰岩露出域と重なった。ICP-MS及びICP-AESによる核種分析では, 赤土試料に含まれる238U, 232Th, 40Kが, それぞれ平均64Bq/kg, 71Bq/kg, 561Bq/kgであると算定された。また, XRFによる分析の結果からは, 赤土の主要化学組成が両島で概ね一様であることが示唆された。これらの結果とその地質学的解釈, 及び大東諸島と大陸との地理的配置などから, 両島に分布する赤土の主要母材は, 少なくとも最終氷期以降に堆積した東アジア起源の風成塵 (いわゆる黄砂) であり, 中国南東部の高自然放射線地域が最も有力な起源地であると推定された。

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