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膀胱壁の放射線感受性の高い細胞を考慮した光子・電子における吸収線量の評価
渡部 陽子木名瀬 栄斎藤 公明
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2006 年 55 巻 12 号 p. 719-725

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抄録

体内に摂取された放射性核種の一部は尿中に排泄されるため, 膀胱の線量評価は放射線防護や放射線診断の観点から重要である。信頼性の高い線量評価には, 放射線感受性の高い細胞を考慮する必要があるため, 膀胱の線量評価においても放射線感受性の高い基底細胞を考慮すべきである。本研究では, 光子及び電子に対する膀胱壁全体や基底細胞 (伸縮の程度により変化: 70~140μm, 基底細胞直径: 5~10μm) の比吸収割合 (SAF) をモンテカルロシミュレーションにより計算し, 9核種 (11C, 13N, 15O, 18F, 89Sr, 90Sr, 90Y, 99mTc, 123I) についてのS値を評価した。その結果, (1) 光子に対する基底細胞のSAFは, 10から30keVの間で膀胱壁全体のSAFよりも極めて高い値となること, (2) 電子に対する基底細胞のSAFは, 10keVから4MeVの間でエネルギーが高くなるにつれて増加すること, (3) 低エネルギー放射線を放出する核種のS値は放射線防護分野において利用されているS値に比べ大きく変化することがわかった。以上から, より現実に近い膀胱の線量評価には, 放射線感受性の高い基底細胞を考慮することが必要であると考える。

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© 社団法人 日本アイソトープ協会
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