洛北史学
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Print ISSN : 1345-5281
論説
唐宋人肉食考
塩 卓悟
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2010 年 12 巻 p. 46-66

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抄録

割股が開始され、人肉愛好者を多く輩出した唐宋時代における、憎悪・復讐による人肉食・人肉嗜好・割股などの人肉食に関する考察を通じて、第一に、憎悪による人肉食は唐代には比較的容認されたものの、宋代では史書から姿を消していくのに対して、復讐殺人やその人肉食は、唐宋代を問わず、国初こそ積極的に容認されるものの、国家の安定化に伴って禁止され衰退したこと、第二に、唐~北宋初期の人肉愛好者は、当時の社会においても異質な存在として忌避されるべき存在であったが、混乱期においては彼らを許容する社会意識も存在していたこと、第三に、「孝」の発現である割股は、則天朝にはすでに実施され、唐後半期から宋代に至っても、国家は支配体制強化のために割股を利用した。そうした国家の思惑に対して現実的打算によって割股を行う民衆も次第に増加したが、孝子の人肉を食する親の行為は社会的に容認されるに至った点などを明らかにした。

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© 2010 洛北史学会
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