2010 年 12 巻 p. 92-118
小札で構成される甲は、五世紀代以降日本の古墳や遺跡から出土する。しかし、これらの用途がすべて確定されているものではない。これは、甲を構成する小札が散逸した状態で出土することという要因があるためである。その問題を解決するため、本研究を行った。本研究の対象としたのは、冑付属具、襟甲、肩甲、籠手、臑当である。それぞれ構造の明らかなものを中心軸に据え、不明な資料へと情報をフィードバックすることで、構造や用途を考えた。これら小札式甲の用途を想定・検討することで、古墳時代中期に小札式甲の導入が、倭の甲冑へもたらした変化を検討した。 甲冑の検討を、小札という部材の検討のみでなく、総合的に考えていく必要性があるということを提示した。