洛北史学
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論説
前漢前半期の酎祭
目黒 杏子
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2017 年 19 巻 p. 42-65

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抄録

酎祭は漢代の皇帝が毎年八月に宗廟で挙行し、諸侯王と列侯(諸侯)が参列した儀礼である。本稿では酎祭の内容などの概要を把握するとともに、前漢前半期におけるその政治的意義と変遷とを考察する。酎祭は漢王朝創立期に秦制を引き継いで策定された。文帝期に諸侯が「酎金」を献上し「助祭」する規定が設けられて、皇帝の威信を帯びた黄金を媒介として、祭儀の挙行を通じて皇帝と諸侯との政治秩序を更新する儀礼となった。この政治秩序は、先秦時代の天子と「諸侯」のそれの延長に位置づけられる。景帝期に高祖と文帝の廟を尊んでその酎祭を皇帝親祭とし、諸侯の使者の参列を義務化したことで、二廟の酎祭の大祭としての威容が整った。また高級官僚の子弟を舞人とする皇帝の功績をかたどる舞楽の演奏が加わり、漢王朝の記憶を伝承し帰属意識を醸成する場となった。武帝期に列侯層の構成が変化し、周辺諸族との関係も変わる中で、酎祭も改訂されたと考えられる。

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