2022 年 24 巻 p. 3-28
情報技術の進歩と共に、様々な学術分野においてデジタル化が取り組まれ、それらが研究にもたらす新たな局面に注目が集まっている。学術におけるデジタル化は、本来的に研究の方法論と密接な関わりをもつが、こうした観点から美術史学や博物館におけるデジタル化が議論され、また評価されることは少なかった。美術史学や博物館では、研究の方法論として、対象となる作品を文字により記録したもの(作品記述)と映像により記録したもの(文化財写真)が基礎となり、精度が高められたそれらが美術史という歴史叙述を支える骨子となる。本稿では、この「記述」と「写真」に注目して、美術史学と博物館におけるデジタル化の意義を確認し、博物館の収蔵品データベースを中心にその歴史的なあゆみを振り返ると同時に、現在の課題と未来への展望について述べる。