抄録
義和団事件を機に二十世紀前半に蒐集された日本国内所蔵の中国古銅器は、中国での発掘調査が進み、考古学の研究対象が遺跡・遺物に移った今においても製作技術論や理化学分析の対象、あるいは博物館の展示資料として用いられている。しかし、国内所蔵の中国古銅器の多くは発見地や伝来が不明・不確かな遊離資料であり、なかには倣古銅器や偽古銅器が雑じる可能性もあるため、再評価し、研究・展示資料としての有効性を示す必要がある。そこで本稿では、宋代以降の古銅器蒐集と古器物学の歴史を整理したうえで、そこから学びとった形態・紋様・材質・制作の四つの要点に基づく観察と発掘資料との比較によって古銅器を評価し、来歴調査を通して製作年代や修理履歴を明らかにすることの重要性を実践的に示した。