日本信頼性学会誌 信頼性
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安全・安心から建築の信頼をめざして(建築と信頼・安全)
石川 孝重
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2005 年 27 巻 1 号 p. 25-36

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抄録

安全神話から安心を求める時代を経て,今後は信頼社会の到来を予感させる.建物が原因で個人や社会活動に支障をきたすことを許さなくなった現代社会,耐震安全性はもちろん,機能保持に対する危機感を高める必要がある.取り巻く社会環境の急激な変化により,建築界も大きな変革を迫られている.性能設計を背景にして設計者には,クライアントとのリスクコミュニケーションが重要になり,性能を実現するための総合的な判断力が求められる.信頼社会は契約社会であり,保証内容に基づく明確な情報開示が求められ,契約に基づいて,クライアントを含めそれぞれの職能における責任が追及されることになる.根拠が客観的に明らかであること,契約を結ぶ双方に合意が成り立つことがきわめて重要である.クライアントの要求性能に基づいた明確な設計が提示され,それによって建築の性能とコストとが適正な関係で連動するシステムが構築されではじめて,建築が健全に社会基盤に根ざしたものとなる.本稿では,今後迎えるであろう信頼社会における建築の有り様を考えてみたい.

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© 2005 日本信頼性学会
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