抄録
今後数回にわたり,本誌上で安全性について多面的に解説を行うことになった.本稿ではその第1段として安全性を信頼性との比較において論じる.安全性に対する取り組みは,様々な事故を教訓に,能動的活動として展開されてきた.しかも,人間はまだ絶対的な方法論を得ていない.一方,信頼性はものの品質を維持するという側面から古来より重視されてはきたが,それを学問の領域まで大きく進展させたのは高々60年ほど前にすぎない.第2次世界大戦や朝鮮戦争当時問題となった調達武器の不具合問題を契機に開始された電子部品の信頼性に関する諮問委員会の報告,いわゆるAGREEレポートがその始めである.併せて,今日では,信頼性や安全性のみでシステムの品質特性を俯瞰することが困難になり,DependabilityやRAMSといった概念が必要になった.このような中で安全性もRISKという尺度で評価されるようになり,安全性技術の管理手法が産業界を超えて共通に論じられるようになったが,この状況を広義の信頼性との関係で捉えると両者の関係が整理できる.