2009 年 31 巻 5 号 p. 335-342
地上デジタル放送の電波を全国あまねく24時間365日とぎれなく届けるために,全国各地に中継放送所を設置している.一般に,中継放送所を結ぶ回線は,専用回線や放送波をそのまま利用するなどして,複数の中継放送所を経由して信号を伝送している.いつでもどこでもよい品質で番組を楽しめるようにするためには,各中継放送所の送信機の信頼性はもとより,回線の品質を適切に設計することが不可欠である.地上デジタル放送の回線設計では,デジタル方式特有のクリフエフェクトと呼ばれる品質劣化やOFDM方式の特徴であるSFNと呼ばれる周波数同期放送ネットワークなど,地上アナログ放送にない信号条件を考慮する必要がある.NHKは,さまざまな検討を重ねて地上デジタル放送にふさわしい回線設計手法を確立するとともに,回線品質を維持するために必要な各種補償器の開発・実用化に取り組んできた.本文では,NHKが実施している回線設計手法と実用化した各種補償器の活用方法について述べる.