日本信頼性学会誌 信頼性
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鉄道車両の乗り上がり脱線とその安全性評価(<特集>運ぶ機械の信頼性・安全性)
石田 弘明
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2010 年 32 巻 8 号 p. 522-527

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抄録

鉄道において,安全への投資はもっとも重要な経営施策であり,列車脱線事故の根絶に向けた各種の取り組みが鋭意進められている.効果的な脱線防止対策を実施するには脱線現象の理解が不可欠で,これまで実際の事故を教訓として,実験,解析の両面から精力的に研究が行われてきた.本稿ではまず,鉄道車両の脱線の中で特に注意を要する乗り上がり脱線を取り上げ,そのメカニズムを解説する.次に,脱線に対する安全性の評価手法を紹介し,その現状と課題について述べる.本稿に紹介する評価手法は,約半世紀に渡って適用され十分な実績を積んだものであるが,信頼性の観点からみるとやや曖昧な部分が残っている感は否めない.鉄道にはレールと車輪間の摩擦をはじめとする不確定な要素が数々あるため,評価には一定の安全率を見込んだ目安値を用いている.また,計測,データ処理の各段階で誤差が生じ,さらに扱う周波数成分が同じでなければ,同じ目安値を適用しても評価結果は異なったものとなる.基本的な現象の解明を進めるとともに,これらの点に信頼性の視点を導入し,評価手法の標準化を図ることが今後の課題の一つと考えられる.

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© 2010 日本信頼性学会
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