抄録
福祉分野へのロボット応用は古くから検討されてきたが,未だに普及には至っていない.その理由のひとつに,福祉ロボットの安全技術が十分に確立していないことが挙げられる.本報では,福祉ロボットの安全に関する現状をまとめ,また筆者らの研究の一部を紹介する.日本では福祉ロボットとして,抱き上げ介護支援ロボットに対する研究開発が多くなされてはいるが,安全に関する未解決の問題があることを指摘し,現状では実用の目途がたっていないことを説明する.特に人体をアームで持ち上げて運ぶことは極めて危険であり,他の方法が望ましい.また,介護支援ロボットの導入に関しては,産業用ロボットと同等程度の安全管理をすべきであることも述べる.それに対して食事などの軽作業の自立を支援するロボットは,比較的安全が確保しやすいだけでなく,直接的に使用者らのQOL向上に結び付くため,すでに重度障害者らによって日常生活で実用的に使われていることを紹介する.最後に,自立支援ロボットの衝突安全に関して,理論および文献から検討した安全条件を提案する.この安全条件を実現するための方法に関しても簡単に述べる.