2015 年 37 巻 4 号 p. 191-200
家庭や社会生活において製品事故が多発している.その原因には,製品の欠陥,ユーザーの誤使用や不注意,危険性への意識の希薄化等の様々な要因が挙げられる.本稿は,製品事故のうち,特に長期にわたって使用される耐久消費財に関する事故発生パターンの解明を目的として,製品評価技術基盤機構(NITE)の作成する製品事故データベースと,内閣府の作成する消費動向調査を利用して製品事故率の経年変化を把握する方法論とその試算結果について述べる.消費動向調査は使用期間が長期にわたる耐久消費財に関して,買い替えなどの消費行動を体系的,数量的に把握できる唯一の政府統計であるが,これまで経済活動としての消費行動の把握に必要な指標しか集計・公表されてこなかった.しかし,本論文の分析によれば,同調査は製品事故パターンの解明にとって重要な情報を内包しており,適切な再集計を行うことにより製品の経年劣化の実態把握や事業者としてのリコール判断などに資する貴重な情報源となりうる.こうした分析結果を踏まえ,本稿は,製品安全の視点から同調査の有効活用方策について提案を行う.