2019 年 41 巻 6 号 p. 363-373
近年,追突事故をはじめ交通事故を未然に防止する安全技術を搭載した自動車が普及している.この技術開発の背景には,自動車運転中にドライバが追突するリスクをいかに認知し,制御しているかを理解するための追突リスク認知評価指標の研究が数多く積み重ねられてきた.本稿では,それぞれの評価指標がどのような狙いに立脚してドライバの認知特性を解釈しようとしているかを比較する.追突リスクを表す代表的な指標について,それぞれの定義や特徴を整理し,追突事故防止のための警報や自動ブレーキシステム設計へ応用された例について述べる.その一方で,将来の普及が見込まれる自動走行システムを実現するためには,前方の衝突リスクだけではなく自車両の周辺に潜む多方向の衝突リスクを適切に評価できることが求められる.そこで,自動走行システムの安全性評価手法に関する国際動向をふまえて衝突リスク評価研究の今後の方向性についても展望する.