2021 年 43 巻 4 号 p. 247-260
本論文では,通信経路を考慮した通信ネットワークの総合信頼度評価の必要性を指摘し,その数理的な定式化と評価アルゴリズムを提示する.伝統的な通信ネットワークの信頼性設計では,エンド-トゥ-エンドの信頼性を確率評価し,一定の規定値以上となるように通信ネットワークの構成を決定していた.しかし,これは電話サービスを前提とした考え方に基づいており,TV会議システムによるテレワークなど多地点間通信サービスが広がってきた今日,ユーザ側の視点に立つと必ずしも適切とは言えない.さらにサービス提供側,特に保全の視点からも適切とは言えない.何故ならば,保全の責任部署は管轄するエリアを通過する多地点間の全ての通信に責任をもって保全をするのでエンド-トゥ-エンドではなく多地点間の通信の障害が問題となるからである.本論文で提案する定式化と評価アルゴリズムは上記問題を解決する.