2025 年 47 巻 4 号 p. 179-191
本稿では,危険感受性を「好ましくない事態が生じる前に危険源を危険であると知覚できる能力(危険源を発見する能力)」[1]と定義する.そして,労働者が事故やヒヤリハットの情報,すなわちリスク情報に触れる際に,その内容を自己に置き換えて考えることで危険感受性が高められるのではないかという展望のもと,以下の点を検討した.すなわち「リスク情報に対する自己への置き換えがどのように行われ,その傾向に個人差が関与するのか」,そして「リスク情報に対する自己への置き換えと危険感受性の間に関連がみられるか」である.実験の結果,リスク情報に対する自己への置き換えの傾向は個人特性として捉えることが可能であることが示された.また,この個人の傾向が危険感受性と関連する可能性が示唆された.