抄録
公的耐用寿命に関する取り組みは4回目となるが、耐用寿命に関する調査研究をディベンダビリティの視点から整備を行ってきた.加えて、ライフサイクルコスティングの健全な評価分析活動の条件、1)適正なデータ収集、2)見積評価手法、3)コストモデルの設定及び4)コスト見積評価プロセスの設立の必要性を提言し、これらを基により適正な見積評価値を創出する為にはこれら要素の当該ライフサイクルを通した完全性と継続的で首尾一貫した活動理念の必要性を説いた.先般の笹子トンネルの天井板崩落事故をはじめ、多くの社会資本に対する保全管理と保全活動の不完全性が観察される.ライフサイクルコスティング活動の視点から見るとき、設計思想の継続的維持管理、中長期保全計画、保全手法と保全支援体制、及び、総合管理責任体制の欠落が新聞報道等から観察される.加えて、社会資本のライフサイクル管理活動としての対処や改善活動が見えず、工学的視点からの管理能力の未熟さを発露しているとみる.本稿は延命化対策以前の、公的耐用寿命の適正化の為の保全と運用に関する考察を行い、現状の社会的工学的水準の低下状態を批判し、あるべき適正で実現可能な道を検討し、提示す.