2016 年 54 巻 1 号 p. 30-41
省察は,津守眞の思想の中でも中心的な概念である。近年保育の質への注目が高まる中で,この概念への言及が増えているが,その多くは反省・記録・話し合いの外的・形式的側面を扱うものとなっている。これに対して本研究は,形式を超える内的過程を含む津守の思想を,その理論的側面のみならず実践思想としての側面から,彼の事例研究を含めて検討し,明らかにするものである。省察の内的過程を特徴づけるものとして,津守の論述と事例の検討により,(1) 行動を表現として見る,(2) コミットメント(保育者の主体的・全人的関与),(3) インキュベーション(孵化)の過程,(4) 子どもとの相互的関係が見出された。さらに省察における主観的解釈の問題について,子どもたちとの出会いに立ち返り,事例を読み解く方法論と実践知を培う必要性が示された。