2019 年 57 巻 1 号 p. 17-28
本研究は,5歳児の描画活動において,幼児が新たな描画表現を生成するために,どのような応答行為を示し合うのかを検討することで,描画表現の即興的創発過程を明らかにすることを目的とする。5歳児クラス計4クラスの自由遊び場面を1年間参与観察し,幼児の応答行為をSawyer(1997)の「フレームレベル」に依拠し分析を行った。分析の結果,描画活動における幼児同士の即興的なやり取りの中には,①多様で複層的な「監督の声」(進行を促す発話や描画行為)が埋め込まれ,描画表現の広がりや深まりにおいて重要な役割を担っていること ②明示的な発話と暗示的な発話の使い分けが描画活動の状況に応じてなされていること ③「監督の声」を発する幼児が固定化されておらず,幼児が互いに提案や指示を行うことが明らかになった。