抄録
戦時下愛育隣保館の訪問活動を基にした健康相談事業について考察した結果,社会事業として始まった健康相談事業が戦時厚生事業化し,母親への育児改善指導が言説上は強化される変容を看た。しかしながら,子どもに対しては,科学的検査から個性を見極め,母親には,子どもの特徴を伝え,その子に応じた育児が徹底されるよう指導した実践の過程に変容は看られなかった。愛育隣保館の多種連携による健康相談事業は,「託す」という子どもの育ちを中心にした保育従事者同士の協力体制の結果が生んだ一つの形態であった。分担を前提とした連携とは,質的に異なるものであった。